近代演技法の父であるコンスタンチン・スタニスラフスキー。その彼が作った演技術「システム」は、現代においても世界中の演技の土台となっております。
その「システム」の中でも基礎的な用語と解説を作りましたので、演技の稽古にお役立てください。
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・ 行動(アクション/action)
役者が役として目標を達成するために行うこと。
・能動的な脚本分析(アクティブアナリシス/ active analysis)
俳優が「自分の足」を使って芝居の一部を分析する舞台稽古方法。
主要な出来事(イベント)や各々の役の行動を決定して、その部分を即興で演じる。
能動的な想像力(アクティブイマジネーション/ active imagination)
五感を使い、役の視点になってものを見ること。
場面の前(ビフォータイム/ before-time)/モーメントビフォー/ moment before)
芝居の始まりまでの出来事、または各々の役が新たに登場する前までのこと。初めの記憶から芝居が始まるまでを能動的に想像した役の人生。
ビット(bit)
芝居は俳優又は演出家によって、管理しやすい区分(セクション)や単位(ユニット)に分けられる。舞台上で出来事(イベント)、役の目的変化、役のデハケがあるときにビットが始まる。
ビート(beat)
台本で、役の思考や行動の変化する箇所で区切ること。
交流(コミュニケーション/communication)
2つの生物の間で、信号を送ったり、受けとったりすること。
出来事(イベント/event)
人の思考や行動に影響を与える何かが起こること。
経験(エクスピアレンス/experiencing)
俳優である自分を横においておき、自分が行うすべてを役の思考や行動によって生み出しながら、役を見つけようとする状態。
自由な体(フリーボディ/free body)
俳優にとって望ましい状態(身体)、緊張から解き放たれた(自由な)身体であり、役柄を創造したり経験したりするのに使われる。
ジャーム(源・つぼみ/germ)
役の本質や種。
与えられた状況(given circumstance)
役が芝居の特定の場面におかれている状況。
想像力(イマジネーション/imagination)
架空の状況(フィクション)である状況を、それが現実であるかのように扱う能力。
内的な独白(インナーモノローグ/inner monologue)
役のマインド(心)を通じて生まれる考え。
目的(オブジェクティブ/objective)
役として与えられた一連の状況の中で達成したいこと。
魔法のもしも~(magic if~)
与えられた状況の中で想像力を引き起こすために、俳優が自分に問いかける「もし~だったら」という質問。
受動的な想像力(passive objective)
舞台上で観客の視点から自分自身を見ること。
サイコフィジカル(心理・身体的/psycho-physical)
思考と行動することの融合であり、それはこのシステムを通し発揮される。思考と行動とは調和して働いている。
光線(レイ/rays)
常に我々の間を流れる目には見えない流れ。
関係性(リレーションシップ/relationship)
自分が他者に対して持つ考え。
潜在意識(サブコンシャス/subconscious)
気付かないうちに、思考や行動に影響をあたえるマインド(精神)の部分。
超目的(スーパーオブジェクティブ/super objective)
芝居のテーマ、役の目的全ての総括であり、その芝居が一体どんなものについて語っているかということ。
役にとっては、超目的とは芝居の間に得たいこと。
テンポ‐リズム(tempo-rhythm)
身体的や心理的に両方においてのペース、自分のまわりのあらゆることや自分たちが行うすべてのペース。
一貫した行動(スルーアクション/through action)
超目的を成し遂げるために役が行うこと。
真実(トゥルースフル/truthful)
与えられた一連の状況に基づいて、役として考え、行動し、自由な身体(緊張のない身体)とビフォータイムを明確に歩んだ状態で能動的に想像したときに、演技は真実となる。
可視化(ビジュアライゼーション/visualizations)
自分の心の目で見る像。
≪参考文献≫
・“STANISLAVSKI IN PRACTICE : EXERCISE FOR STUDENTS“ 出版:Routledge Taylor&Francis Group 著:Nick O’Brien